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「櫓太鼓がきこえる」感想:鈴村ふみさんの小説で見る戦後日本の農村の姿【読書感想文】

鈴村ふみさんの小説「櫓太鼓がきこえる」は、戦後の日本の農村を舞台に、若者たちの恋愛や夢、伝統や文化の断絶などを描いた作品です。私はこの小説を読んで、とても感動しました。特に、主人公の一人である櫓太鼓の名手・石田勝男の人生には、深く共感しました。

櫓太鼓がきこえる (集英社文庫)

石田勝男は、戦争で父親を亡くし、母親と妹と暮らす貧しい農家の青年です。彼は、櫓太鼓という伝統芸能に情熱を持ち、村の祭りや催し物で演奏します。しかし、彼の才能は、村の人々には理解されず、むしろ妬まれたり嘲笑われたりします。彼は、自分の夢を追うために、村を出て都会に行きたいと思っていますが、家族や恋人のために、なかなか決心できません。

彼の恋人は、村の名家の娘である小林美代子です。彼女は、勝男とは対照的に、裕福で教養があり、美しい女性です。彼女は、勝男の才能を認めて応援し、一緒に村を出て都会で暮らしたいと思っています。しかし、彼女の両親は、勝男との結婚に反対し、彼女に別の男性との見合いを勧めます。彼女は、自分の愛情と家族の期待との間で、苦悩します。

この二人の恋愛は、戦後日本の農村の姿を象徴しています。農村は、都会との格差や近代化の波に押されて、伝統や文化を失いつつあります。若者たちは、村の閉塞感や偏見に苦しみ、自分の夢や希望を見出せません。彼らは、村を出て都会に行くことで、自由や幸せを得られると思っていますが、それは本当にそうでしょうか?

私は、この小説を読んで、自分の人生についても考えさせられました。私は、都会で暮らしていますが、本当に満足しているのでしょうか?私は、自分の夢や才能を見つけて、それを活かしているのでしょうか?私は、自分の愛する人や家族と、幸せになれるのでしょうか?私は、自分のルーツや文化を大切にしているのでしょうか?

この小説は、私たちに、そうした問いかけを投げかけてくれます。そして、私たちに、自分の人生を見つめ直すきっかけを与えてくれます。私は、この小説を読んで、とても感謝しています。鈴村ふみさんの「櫓太鼓がきこえる」は、戦後日本の農村の姿だけでなく、私たちの現代の姿も映し出してくれる、素晴らしい作品だと思います。

ちなみにこの作品は、第33回小説すばる新人賞を受賞し、第166回芥川賞の候補にもなりました。非常に注目されている作品だと思います。