BOOK PICKS~おすすめ書籍と映像のレビュー~

お気に入りの書籍と映像作品をご紹介します

書籍 小説

古川真人「背高泡立草」〜記憶と歴史が結びつく物語の魅力〜【読書感想文】

古川真人さんの「背高泡立草」は、第162回芥川賞を受賞した作品です。この作品は、長崎の島にある母の実家の納屋の草刈りに行った主人公が、家族や島の人々から聞いた様々な物語を通して、自分のルーツや記憶について考えるという内容です。この作品の魅力は…

【浅田次郎「終わらざる夏〈上〉」】戦争の矛盾と人間の尊厳を描く渾身の長編【読書感想文】

浅田次郎さんの「終わらざる夏〈上〉」は、戦争の矛盾と人間の尊厳を描く渾身の長編です。 主人公の片岡直哉は、妻と息子とアメリカへ移住する夢を抱いていた翻訳出版社の編集長ですが、戦況が悪化する中、45歳で臨時召集されてしまいます。彼は、歴戦の兵・…

西條奈加『九十九藤』-女性の生き方と恋の物語【読書感想文】

今回は、西條奈加さんの『九十九藤』について感想を書きたいと思います。この本は、江戸時代の口入屋(人材派遣業)を舞台にした、仕事と恋の物語です。主人公のお藤は、女ながらに口入屋の差配となり、新しい商法で店を立て直していきます。そこに、かつて…

「海の見える理髪店」は、父と息子の切ない再会を描いた名作【読書感想文】

荻原浩さんの「海の見える理髪店」を読んだ感想を書きたいと思います。 「海の見える理髪店」は、第156回直木賞と第14回本屋大賞をダブル受賞した、人生の可笑しさと切なさが沁みる短編集です。全6編の中でも、特に印象に残ったのが表題作の「海の見える理髪…

読書の力を感じる、感動の短編集『相沢沙呼:教室に並んだ背表紙』【読書感想文】

今回は、相沢沙呼さんの小説『教室に並んだ背表紙』の読書感想文を書きたいと思います。この本は、中学校の図書室を舞台に、読書との出会いで変わっていく少女たちの心模様を描いた全六編の連作短編集です。著者の相沢沙呼さんは、第19回鮎川哲也賞を受賞し…

猫とともに歩む人生の物語「唯川恵:みちづれの猫」【読書感想文】

私は猫を飼ったことがありません。猫は気まぐれで自由奔放なイメージがあり、人間との距離感が難しいと思っていました。しかし、この本を読んで、猫と人間の絆の深さや温かさに触れ、猫に対する見方が変わりました。 この本は、猫と人間の関係を描いた7つの…

寺地はるな「水を縫う」-人生の流れと向き合う詩集【読書感想文】

寺地はるなさんの詩集「水を縫う」は、水のさまざまな姿や意味を詩的に表現した作品です。水は、生命の源、自然の力、時間の流れ、記憶の象徴など、多くのことを表しています。作者は、水と自分の人生との関係を探求し、水を縫うように自分の道を切り開こう…

桜木紫乃『あのこは貴族』〜女性の生き方と友情を問い直す小説【読書感想文】

山内マリコさんの『あのこは貴族』は、映画化もされた話題の小説です。この小説は、東京の上流階級に生まれた華子と、地方から上京してきた美紀という二人の女性の出会いと交流を描いた物語です。この小説を読んで、私は現代の階級社会と女性の生き方につい…

桜木紫乃「家族じまい」を読んで考えたこと~家族の絆と別れの意味~【読書感想文】

「家族じまい」という言葉には、どんな意味が込められているのでしょうか。桜木紫乃さんの同名の小説は、認知症になった母親と、それを介護する父親、そして二人の娘とその周りの人々の物語です。五つの章に分かれた連作短編集で、それぞれの登場人物の視点…

小川糸『にじいろガーデン』は家族の愛と多様性を描く感動作【読書感想文】

小川糸さんの『にじいろガーデン』は、レズビアンカップルとその子どもたちの家族の物語です。集英社文庫から発売されています。この本を読んで、私は家族の愛と多様性について考えさせられました。この記事では、あらすじと感想を紹介します。 あらすじ 感…

[宮本輝:灯台からの響き]~亡き妻の秘密と人生の再発見~【読書感想文】

宮本輝さんの『灯台からの響き』は、亡き妻の秘密を追う旅を通して、人生の尊さや家族の絆を描いた感動的な物語です。 主人公の康平は、妻の蘭子とともに板橋の商店街で中華そば店を営んでいましたが、蘭子が急病で亡くなってからは店を閉めてしまいます。あ…

時間を超えた恋の物語――『どこよりも遠い場所にいる君へ』【読書感想文】

『どこよりも遠い場所にいる君へ』は、阿部暁子さんの恋愛小説です。 主人公の月ヶ瀬和希は、ある秘密を抱えて離島の高校に進学します。そこで、神隠しの入り江で倒れていた少女・七緒と出会います。七緒は記憶を失っており、自分が1974年から来たと言います…

きょうの日はさようなら、三十年前の女子高生とのひと夏の思い出【読書感想文】

一穂ミチさんの「きょうの日はさようなら」は、2025年の夏に突然現れた30年前の女子高生との交流を描いた物語です。 主人公の明日子と日々人は、双子の高校生で、父親から知らされた従姉妹の今日子と一緒に暮らすことになります。しかし、今日子は冷凍睡眠か…

十番様の縁結び 神在花嫁綺譚|東堂燦のファンタジー恋愛小説【読書感想文】

東堂燦さんのファンタジー恋愛小説「十番様の縁結び 神在花嫁綺譚」を読みました。 この小説は、織物の街で幽閉された少女・真緒と、縁の神・十番様を所有する領主・終也の純愛物語です。真緒は、一途に機織をして生きてきたのに、親に虐げられていました。…

「この恋が、かなうなら」~切なくてせつない青春の物語~

私は最近、いぬじゅんさんの小説「この恋が、かなうなら」を読みました。この小説は、トラウマを抱えた梨沙が、東京から静岡の高校に二カ月間、国内交換留学をすることになり、そこで出会った航汰との恋の物語です。 この小説の魅力は、何といっても登場人物…

『桐島、部活やめるってよ』青春の一瞬を切り取ったオムニバス小説【読書感想文】

今回は朝井リョウさんの小説『桐島、部活やめるってよ』について、読書感想文を書いてみたいと思います。この作品は2012年に映画化され、神木隆之介さんや橋本愛さんなどの若手俳優が出演しました。今回は小説の内容に基づいて感想を述べます。 この小説は、…

『できない男』を読んで、自分のできないことに向き合う勇気をもらった【読書感想文】

今回は、額賀澪さんの小説『できない男』について、読んだ感想を書きたいと思います。 この本は、2020年3月に集英社から刊行された、アラサー男子が主人公のお仕事小説です。私は、この本のタイトルと表紙に惹かれて、読んでみることにしました。タイトルの…

【読書感想文】川上健一『翼はいつまでも』~ビートルズと青春の記憶~

こんにちは。今回は、川上健一さんの『翼はいつまでも』という小説について、読書感想文を書いてみたいと思います。この小説は、第17回坪田譲治文学賞を受賞した作品で、青森県の中学生だった主人公が、ビートルズの音楽に触れて変わっていく姿を描いた青春…

部活に打ち込む高校生たちの青春を描いた壁井ユカコの『空への助走』を読んで【読書感想文】

今回は、壁井ユカコさんの『空への助走 福蜂工業高校運動部』(集英社文庫)を読んだ感想を書きたいと思います。 この本は、福蜂工業高校のバレー部、陸上部、柔道部、釣り部などの部活に所属する高校生たちの青春を描いた連作短編集です。壁井ユカコさんは…

いちご同盟 ~15歳の少年たちの生きる勇気と友情~【読書感想文】

三田誠広さんの「いちご同盟」は、中学三年生の少年たちが、重症の腫瘍で入院中の少女と出会い、生きる意味や価値を問いかける青春小説です。この作品は、1997年に映画化され、1999年にNHK教育テレビでドラマ化されました。 私は、この作品を読んで、15歳と…

『おしまいのデート』は別れの物語ではなく、新しい出会いの物語だった【読書感想文】

今回は、瀬尾まいこさんの短編集『おしまいのデート』について感想を書きたいと思います。 この本は、表題作を含む5つのデートにまつわる物語が収録されていますが、デートと言っても恋人同士のデートではありません。祖父と孫、元教師と教え子、同級生、公…

『金木犀とメテオラ』感想: 孤独な少女たちの青春を描く渾身の長編小説【読書感想文】

『金木犀とメテオラ』は、安壇美緒さんの2作目の長編小説です。北海道に新設された中高一貫の女子校・築山学園を舞台に、東京生まれの宮田佳乃と地元生まれの奥沢叶というふたりの少女の視点から、やりきれない思春期の焦燥や少女たちの成長を描いています。…

窪美澄『やめるときも、すこやかなるときも』〜欠けた心を埋め合う恋の物語〜【読書感想文】

今回は、窪美澄さんの『やめるときも、すこやかなるときも』(集英社文庫)を読んだ感想を書きたいと思います。この本は、大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女が出会い、お互いを知らないまま、少しずつ歩み寄っていく道のりを描いた長編…

「恋に焦がれたブルー」〜青春の甘酸っぱさと切なさを味わう一冊〜【読書感想文】

「恋に焦がれたブルー」は、宇山佳佑さんのデビュー作であり、第23回日本文学賞の受賞作です。 主人公の高校生・藤井悠太は、同級生の水野美咲に恋をするが、彼女は幼なじみの松本健太と付き合っているという噂を聞く。悠太は美咲に近づくために、健太と友達…

『人間失格』を読んで感じた太宰治の孤独と苦悩【読書感想文】

今回は、太宰治の名作『人間失格』について、私なりの感想を書いてみたいと思います。この小説は、1948年に発表された太宰治の最後の作品で、自殺をする1か月前に書き終えたものです。実話ではなく創作ですが、太宰の実人生をなぞったような小説です。 物語…

『桃源』黒川博行の新シリーズは正統派警察小説の傑作!【読書感想文】

今回は、黒川博行さんの最新作『桃源』を読んだ感想をお伝えします。 黒川博行さんといえば、『疫病神』シリーズや『後妻業』など、ヤクザや探偵などひと癖もふた癖もあるキャラクターが活躍する小説で有名ですが、今回の『桃源』は、正統派警察小説として書…

香りの魔法に魅せられた物語――千早茜『透明な夜の香り』

千早茜さんの最新作『透明な夜の香り』は、人の秘密や記憶を香りに変える天才調香師の物語です。 連作短編の形式で構成されており、それぞれのエピソードが繊細につながっていきます。 読みながら、香りの力や魅力について考えさせられました。 主人公の一香…

『ホーム』――野球という境界線を越えて【読書感想文】

堂場瞬一さんの小説『ホーム』は、東京オリンピックの野球アメリカ代表監督になった元日本人大リーガーの藤原雄大と、彼がスカウトした日米の二重国籍を持つ天才スラッガーの芦田大介の物語である。 この作品は、堂場さんのデビュー作である『8年』の続編と…

『七つの会議』は会社の闇を暴く小説ではない!池井戸潤が描く人間ドラマの魅力【読書感想文】

今回は、池井戸潤さんの小説『七つの会議』について感想を書きたいと思います。この作品は、2019年に野村萬斎さん主演で映画化されたことでも話題になりましたが、私は原作の小説を読みました。 この小説は、中堅電機メーカーの不祥事に巻き込まれていく社員…

『金の角持つ子どもたち』~夢に向かって努力する人々の物語~【読書感想文】

今回は、藤岡陽子さんの『金の角持つ子どもたち』という小説を読んだ感想を書きたいと思います。この本は、日本最難関と言われる中学を受験したいという夢を持った小学6年生の俊介と、その夢を応援する家族や塾の先生の姿を描いた感動の長編小説です。 私は…