まいにちのひとかけら

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辻村深月『この夏の星を見る』感想レビュー|映画化・「読書メーター OF THE YEAR 2023-2024」ノミネート・「第7回未来屋小説大賞」候補作

辻村深月『この夏の星を見る』は、コロナ禍という未曾有の時代に生きた中高生たちの視点から、孤独と不安、そして星空を通じてつながる希望を描いた青春小説です。読み終えると、胸の奥に静かな温もりと「また空を見上げたい」という思いが残ります。

本作は話題性と文学的評価の両面で注目され、「読書メーター OF THE YEAR 2023-2024」ノミネート「第7回未来屋小説大賞」候補に選ばれました。さらに映画化も決定し、今後ますます幅広い層に届くことが期待される作品です。


あらすじ(ネタバレなし)

2020年、突然の休校、部活動停止、行事の中止――「いつもの日常」が失われた中高生たち。孤独や葛藤を抱える彼らは、オンラインを通じて同じ空を見上げる観測企画に挑みます。星を追う行為は、ただの学びや競技ではなく、自分自身と向き合うための光となっていきます。

群像劇として複数の視点で描かれる物語は、距離を超えて心をつなぐ瞬間を浮かび上がらせます。星空を見上げる行為が、読者自身の記憶や痛みをやさしくほどいてくれるのです。


作品の魅力

1. 距離を超えるリアルなつながり

地理的・心理的距離を、オンラインや星空を通じて少しずつ近づけていく描写が秀逸です。

2. 星を見ることのメタファー

観測は、他者を理解しようとする眼差しの象徴。ピントを合わせるように、相手や自分を見つめ続ける姿が印象的です。

3. コロナ禍の「心の記録」

奪われた行事や閉塞感を、センセーショナルにではなく丁寧に描写。読者にとっての「心の記録」として響きます。

4. コンテストがもたらす連帯

勝敗ではなく、「同じ瞬間を共有した」という感覚こそが本作の価値。共に空を見上げることの力を感じます。

5. 言葉の温度

辻村作品ならではの、会話や独白のリアリティ。沈黙や一言が誰かを救う瞬間が心に残ります。


印象に残ったテーマ

  • 諦めない観測 ― 見えないから探し続けることの意味。
  • 代替の時間 ― 失った行事の代わりに得た、画面越しの連帯。
  • 見上げる選択 ― 空を見ることは、現実から逃げるのではなく「いま」を確かめる行為。


受賞・映画化について

「読書メーター OF THE YEAR 2023-2024」ノミネート「第7回未来屋小説大賞」候補は、幅広い読者に届いた証拠です。

また、映画化によって天体観測や夜空の風景が映像として立ち上がると、小説の静けさと高揚が新しい形で広がるでしょう。


個人的ハイライト

  • オンライン接続の不安定さをリアルに描き、物語の臨場感につなげている点。
  • 群像劇ならではの呼吸感。誰も脇役にならず、それぞれの物語が光を持っている。
  • 比喩の美しさ。星・光・焦点といった言葉が体験的に響く。

こんな人におすすめ

  • コロナ禍を振り返りたい人。
  • 友情や家族とのすれ違いと再接続を描く物語が好きな人。
  • 星や宇宙を特別な知識なしで楽しみたい人。

まとめ

『この夏の星を見る』は、失われた日常を抱えながらも、誰かと同じ空を見上げる希望を描いた物語です。ノミネート・受賞候補・映画化といった話題性はありますが、何より読んだ人の心に深い余韻を残す小説。あなたもぜひこの夏、空を見上げながら読んでみてください。