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「海の見える理髪店」は、父と息子の切ない再会を描いた名作【読書感想文】

荻原浩さんの「海の見える理髪店」を読んだ感想を書きたいと思います。

「海の見える理髪店」は、第156回直木賞と第14回本屋大賞をダブル受賞した、人生の可笑しさと切なさが沁みる短編集です。全6編の中でも、特に印象に残ったのが表題作の「海の見える理髪店」でした。

海の見える理髪店 (集英社文庫)

この作品は、海辺の小さな町にある理髪店に予約を入れた主人公が、店主の人生を聞きながら、自分との関係に気づいていくという物語です。店主は、かつて有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪師でしたが、ある事件をきっかけに刑務所に入り、出所後に今の店を開業したのでした。

店主は、自分の生い立ちや経歴を語りますが、その中には、主人公にとって衝撃的な事実が隠されていました。主人公は、店主が自分の父親であることに気づきますが、そのことを明かすことはできませんでした。店主も、主人公が自分の息子であることに気づきますが、同じくそのことを明かすことはできませんでした。二人は、言葉にできない想いを胸に秘めながら、別れることになります。

この作品は、父と息子の切ない再会を描いた名作だと思います。店主の語り口は、淡々としていて、感情をあまり表に出さないようにしていますが、その裏には、悔恨や愛情や寂しさが溢れています。主人公も、店主に対して、怒りや恨みや憐れみや慈しみなど、複雑な感情を抱きますが、それを言葉にすることはできません。二人は、互いに認め合いながらも、距離を保ち続けます。

この作品の魅力は、その距離感にあると思います。二人は、親子としての絆を取り戻すことはできませんでしたが、それでも、一瞬だけでも、同じ空間で同じ時間を共有することができました。それは、二人にとって、かけがえのないひとときだったのではないでしょうか。この作品は、そのひとときを、美しくも切なくも描いています。

「海の見える理髪店」は、父と息子の物語ですが、それだけではありません。人生に訪れる喪失と希望を描いた物語でもあります。店主は、自分の過ちや運命に負けずに、理髪師として生き続けました。主人公は、自分の父親との再会を通して、自分の人生を見つめ直しました。二人は、それぞれに、生きる意味や価値を見出しました。

この作品は、私にとっても、心に残る作品です。私も、自分の親との関係や、自分の人生について、考えさせられました。この作品を読んで、私は、自分の親に感謝したいと思いました。そして、自分の人生に希望を持ちたいと思いました。

「海の見える理髪店」は、泣いたり笑ったりするような作品ではありませんが、心に染みるような作品です。読んだ後に、ほっとするような気持ちになります。この作品を読んで、あなたも、自分の人生を見つめ直してみませんか?