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『おしまいのデート』は別れの物語ではなく、新しい出会いの物語だった【読書感想文】

今回は、瀬尾まいこさんの短編集『おしまいのデート』について感想を書きたいと思います。

おしまいのデート (集英社文庫)

この本は、表題作を含む5つのデートにまつわる物語が収録されていますが、デートと言っても恋人同士のデートではありません。祖父と孫、元教師と教え子、同級生、公園の犬をシェアする男女、保育士と園児など、様々な関係性のデートが描かれています。それぞれのデートには、別れや終わりの予感が漂っていますが、それは決して悲しい別れではなく、新しい出会いや始まりへのきっかけになっています。瀬尾まいこさんらしい、温かくて優しい物語です。

私が一番好きだったのは、表題作の『おしまいのデート』です。この物語は、両親の離婚後、月に一度、父の代わりに祖父と会っている中学生の彗子と、その祖父のデートを描いています。彗子は、母の再婚を機に祖父と会うことをやめることになりますが、最後のデートで祖父から大切な言葉を聞きます。祖父は、彗子に「生きていればどんなことにも次はある」と言って、これからの人生を応援してくれます。彗子は、祖父とのデートを通して、自分の気持ちや家族のことを見つめ直すことができます。祖父とのデートはおしまいになりますが、彗子の人生はこれから始まるのです。この物語は、別れと出会いのバランスが絶妙で、心に響きました。

他の物語も、どれも素敵でした。『ランクアップ丼』は、不良生徒だった三好くんと、彼に玉子丼を食べさせてくれた上じいとのデートです。三好くんは、上じいの死後、玉子丼を作って彼に感謝の気持ちを伝えます。『ファーストラブ』は、同じ教室の男子生徒同士のデートです。宝田くんと広田くんは、お互いに惹かれ合っていますが、周りの目を気にして素直になれません。しかし、デートの最後に、二人は初めてキスをします。『ハッピーバースデー』は、公園で犬をシェアしている男女のデートです。犬の飼い主は、犬を捨ててしまった元夫です。男女は、犬の誕生日を祝って、元夫への恨みを吐き出します。『おしまいのデート』は、保育士の美咲さんと、彼女が担当する園児のデートです。美咲さんは、園児の父親と再婚することになりますが、園児はそれを受け入れられません。美咲さんは、園児と一緒に遊んで、彼に新しい家族になることを伝えます。

この本は、デートという言葉から連想されるような恋愛物語ではありませんが、それだからこそ、人と人とのつながりや心の動きを感じることができます。瀬尾まいこさんの文章は、ほんのりとした切なさと優しさが溢れています。デートというテーマを通して、人生のさまざまな局面を描いた短編集です。読んでいると、自分の人生にもデートがあったなと思い出します。デートというのは、別れの物語ではなく、新しい出会いの物語なのかもしれません。この本を読んで、あなたもデートを楽しんでみてはいかがでしょうか。