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『金木犀とメテオラ』感想: 孤独な少女たちの青春を描く渾身の長編小説【読書感想文】

『金木犀とメテオラ』は、安壇美緒さんの2作目の長編小説です。北海道に新設された中高一貫の女子校・築山学園を舞台に、東京生まれの宮田佳乃と地元生まれの奥沢叶というふたりの少女の視点から、やりきれない思春期の焦燥や少女たちの成長を描いています。装画は、漫画家の志村貴子さんによる描き下ろしです。

金木犀とメテオラ (集英社文庫)

この小説の魅力は、ふたりの主人公のキャラクター造形と心理描写にあります。佳乃は、家庭の事情から東京から北海道に引っ越してきた秀才で、トップの成績で入学した築山学園で、自分の居場所を探そうとします。しかし、同じクラスには、地元で人気の美少女で成績優秀な叶がいて、佳乃は彼女に対抗心を燃やします。叶は、佳乃のことを最初はライバルとして見ていましたが、次第に佳乃の孤独な素顔に気づき、興味を持ち始めます。ふたりは、お互いに内面に欺瞞があることを察しながらも、決して仲良くはなりません。しかし、ふたりの関係は、学園生活の中でさまざまな出来事を通して、微妙に変化していきます。

この小説は、ふたりの少女の視点で交互に物語が進んでいきますが、そのときに見える周囲の人物や風景の描写がとても細やかで、読者はまるで自分がその場にいるかのように感じます。また、ふたりの心の動きや感情の変化も、繊細でリアルに表現されています。特に、ふたりが家庭で抱える問題や、学園での友人関係や恋愛など、思春期特有の悩みや葛藤を描いた場面は、胸に迫るものがあります。ふたりの少女は、孤独で辛くて怖いと感じながらも、自分の理想の自分を演じようとしますが、その裏には、本当は誰かに理解されたいという願望が隠されています。この小説は、そんなふたりの少女の青春を、温かくも切なくも描いています。

『金木犀とメテオラ』は、孤独な少女たちの青春を描く渾身の長編小説です。ふたりの少女の成長と変化を通して、人間の心の複雑さや深さを感じさせてくれます。この小説を読んで、自分の思春期のことを思い出したり、自分の中に眠っている感情に気づいたりするかもしれません。この小説は、人が思うよりもずっと、この世で奇跡は起こりうるということを教えてくれるかもしれません。