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【柴田錬三郎賞受賞作】伊坂幸太郎『逆ソクラテス』を読んでみた!先入観をひっくり返す小学生たちの物語【読書感想文】

今回は、第33回柴田錬三郎賞を受賞した伊坂幸太郎さんの短編集『逆ソクラテス』を読んでみました。

伊坂幸太郎さんといえば、『ゴールデンスランバー』や『死神の精度』などのベストセラー作品で知られる人気作家ですが、今作も伊坂ワールド全開のエンターテイメント作品です。

本屋大賞にもノミネートされた話題の作品なので、気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、『逆ソクラテス』のあらすじや感想、読みどころなどを紹介したいと思います。

※ネタバレには注意してくださいね。

『逆ソクラテス』とは?

『逆ソクラテス』は、小学生たちが主人公の5つの短編からなる作品です。

各話はそれぞれ独立していますが、登場人物や設定が微妙にリンクしているので、全体を通して読むとより楽しめます。

タイトルの「逆ソクラテス」とは、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの逆の意味で、自分は何でも知っていると思い込み、他人の意見を聞かない人のことを指します。

作品のテーマは、「先入観で決めつける人に立ち向かう」というもので、主人公たちは自分たちの世界をひっくり返すために様々な作戦を練ります。

その過程で、自分の考えをはっきりと言えるようになったり、仲間との絆を深めたり、自分の可能性を広げたりします。

伊坂幸太郎さんらしい、ユーモアとスリルと感動が詰まった作品です。

 

『逆ソクラテス』の感想

私は伊坂幸太郎さんの作品が大好きなので、今作も期待して読みましたが、期待以上に面白かったです。

どの話も、子どもたちの視点から見た世界が鮮やかに描かれていて、彼らの思いや行動に共感したり驚いたりしました。

特に印象に残ったのは、表題作の「逆ソクラテス」です。

この話では、主人公の加賀と安斎が、先入観で人を判断する教師の久留米に対抗するために、クラスメイトの草壁を助けるというプロットが展開されます。

草壁は、久留米先生に「スロウ」と呼ばれている子で、勉強も運動も苦手で、クラスでも浮いている存在です。

しかし、加賀と安斎は草壁に潜在的な才能があると信じて、彼をカンニングさせたり、美術館の絵を持ち出したり、不審者の噂を流したり、プロ野球選手に話しかけたりと、次々と奇想天外な作戦を実行します。

その結果、草壁は自分の可能性に気づき、久留米先生に「僕は、そうは、思いません」と言い返すことができるようになります。

この話の見どころは、加賀と安斎の発想力と行動力です。

彼らは、草壁を助けるために、自分たちの力で世界を変えようとします。

そのためには、大人の常識やルールにとらわれず、自分たちの考えを貫きます。

その姿は、とても勇敢で素直で、清々しいです。

また、彼らの作戦は、伊坂幸太郎さんの得意とする伏線の回収が見事にされています。

最初は何の意味もなさそうな出来事やセリフが、後に重要な役割を果たします。

例えば、加賀が草壁に伝えた、プロ野球選手になったらテレビに向かってする合図は、物語の冒頭で紹介されていました。

その合図は、両手で顔を洗うようにしてこすり、その後に指を二つ突き出すというもので、加賀と安斎が考えた「逆ソクラテス」のサインです。

このサインは、自分は何でも知っていると思い込む人に対して、「僕は、そうは、思わない」という意思表示をするものです。

物語の最後で、草壁がプロ野球選手になって、そのサインをするシーンが描かれています。

これは、彼が自分の夢を叶えたことを示すとともに、加賀と安斎との友情を象徴するものです。

このように、『逆ソクラテス』は、子どもたちの成長と冒険を描いた、爽快でせつなく、心に残る作品でした。

伊坂幸太郎さんのファンはもちろん、子どもの頃に戻って読みたいと思う方にもおすすめです。

ぜひ読んでみてくださいね。